WBCで野球日本代表「侍ジャパン」を世界一に導いた栗山英樹監督は、多彩な言葉の持ち主だ
大の読書家でもある栗山監督が発する言葉は、何気ない一言にも深い意図が含まれているように響く
決勝戦で前回覇者・米国に劇的な勝利を飾り、3大会ぶりに王座奪還を果たした侍ジャパン
短期決戦のために集まったとは思えないほど固い結束力がチームに芽生えた要因の一つは、間違いなく栗山監督の言葉にあった
2021年2月の就任以来、指揮官が発してきた言葉の中から、勝てるチームや組織を作り上げるためのヒントを探る。
自分も本を読むのは好きです
確かに読書を続けて行くと人生観が変わっていくような気がします
そして、人生に於ける自分の名言がここに残り…指針ができてくるのですよ
だから、読書、歴史書を読むことを君達に推奨しているのです
それではこれから栗山監督の人心掌握術について書いていきたいと思います
選手が「やる気」を起こす言葉
WBCに向け、最終的なメンバー選考に臨んでいた2022年12月、栗山監督は米国を拠点とするダルビッシュ有投手(サンディエゴ・パドレス)を訪問し、この言葉を投げかけた
すると、第2回WBC優勝投手でもあるベテラン右腕から「できる限りジャパンに協力したい」という返事があったという
組織のトップに立つ人物から直接、協力を求められ、悪い気がする人はいない
さらに、漠然と協力を仰ぐだけではなく、「プロ野球の若い選手たちは練習法やコンディショニング、投げ方、学ぶことは山ほどある」と期待する役割を具体的に提示することで、ダルビッシュ投手にとってチーム内における自身の姿を思い描きやすくなっただろう
実際、ダルビッシュ選手は2月17日の宮崎キャンプ初日からチームに合流。自身の持てる知識や技術を惜しげもなく若手に伝え、精神的支柱としての貢献も果たした
信頼することで得た信頼
昨季は日本人最多本塁打記録を塗り替え、史上最年少で3冠王に輝いた村上宗隆内野手(東京ヤクルト)
侍ジャパンでは4番打者として期待されたが、なかなか本来の打撃ができず。チームが勝ち進む中で、苦悩する村上選手だったが、栗山監督はラインナップから外すことなく、クリーンナップとして起用。指揮官に「最後はお前で勝つんだ」と言い聞かされてきた村上選手は、準決勝のメキシコ戦で見事、センター頭上を超えるサヨナラ打を放ち、喜びを爆発させた
村上選手に限らず、チーム全員に対して信頼の言葉を発し、行動した栗山監督。先に自らが偽りのない信頼を示すことで、チームからの厚い信頼を勝ち得ていった
正直であることの大切さ
準決勝のメキシコ戦で劇的なサヨナラ勝利を収めた後、記者会見場に姿を現した栗山監督は、感動と興奮がないまぜになった表情でこう語った
自身の想いを飾ることなく、真っ直ぐな言葉で発する栗山監督。組織の頂点に立つとなかなか本音を言えないこともあるが、栗山監督は喜怒哀楽を素直に表現
自らが判断を誤った時は誰かに責任転嫁することなく、きちんと誤りを認め、謝罪する姿が印象的だった
人間くさい一面を隠さないことで、選手は“共感”できる親しみを覚えたはずだ
上記に挙げた言葉はほんの一例に過ぎない
「組織論」あるいは「チーム構築」というキーワードを念頭に置きながら、栗山監督の言葉を振り返ってみると、また新たな魅力と発見が得られそうだ。